SESエンジニア派遣で見落としがちな「労使協定」作成の注意点
IT企業
スタートアップ
2026.03.19
IT企業の経営者の皆さん、自社の正社員エンジニアをSESで客先に送り出す際、労使協定方式の対応は万全でしょうか?
同一労働同一賃金の法改正以降、派遣元として守るべきルールは想像以上に細かくなっています。今回は、現場でつまずきやすいポイントを整理します。
1. 「一般賃金」との比較は毎年必須
労使協定方式では、派遣エンジニアの賃金が「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額(一般賃金)」と同等以上であることが求められます。この一般賃金は毎年6〜7月に局長通知で更新されるため、協定の見直しも毎年行う必要があります。「一度作って終わり」は通用しません。
2. 職種の選定を恣意的に行わない
賃金構造基本統計調査や職業安定業務統計から対応する職種を選びますが、IT系は「プログラマー」「システムエンジニア」など複数の職種にまたがりがちです。賃金を低く見せるために都合の良い分類を使い分ける行為は明確に禁止されています。実態に即した職種を誠実に選定しましょう。
3. 賃金は「基本給・賞与等」「通勤手当」「退職金」の3本立て
一般賃金との比較は、A(基本給・賞与・手当等)、B(通勤手当)、C(退職金)に分けて行います。退職金は「制度で支給」「前払い」「中退共等への加入」の3方式から選択可能です。
SES企業では退職金前払い方式を採るケースも多いですが、その場合は「基準値および基準値に能力・経験調整指数を乗じた値」の5%以上が目安となる点に注意してください。
4. 昇給の仕組みがないと法律要件を満たさない
経験・能力の向上があった場合に賃金が改善される仕組みの整備が必須です。等級制度やスキル評価に連動した昇給テーブルを設け、「同じ単価のまま据え置き」にならない運用を協定に明記しましょう。
5. 協定の周知と報告を忘れずに
締結した労使協定は、書面交付やイントラネット掲示などで全労働者に周知する義務があります。また、毎年度の事業報告書に添付して労働局へ提出することも必要です。
SESビジネスは柔軟な働き方を提供できる一方、派遣元としてのコンプライアンス責任は年々重くなっています。労使協定の整備は、エンジニアの待遇改善と会社のリスク管理の両面で不可欠な取り組みです。まずは自社の現状を点検するところから始めてみてください。


