労働時間制度の種類と自社に合う制度の選び方
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2026.10.12
残業が減らないのに、現場はいつも忙しい。いまの働かせ方が自社に合っているのか、不安になりますよね。
労働時間制度にはいくつもの種類があり、名前は知っていても違いが分かりにくいものです。合わない制度を選ぶと、残業代や現場の負担が増えるおそれがあります。
この記事では、制度の種類と特徴を整理し、自社に合う制度を選ぶための判断の目安をお伝えします。

なぜ今、労働時間制度の見直しが必要なのか
働き方が変わり、原則の枠に収まらなくなっている
労働時間の原則は、1日8時間、1週40時間です。この枠を超えて働いてもらうには、36協定の締結と届出、割増賃金の支払いが必要になります。
ところが、リモートワークやシフト勤務が広がり、毎日同じ時間に働く形は当たり前ではなくなりました。月末だけ忙しい部署もあれば、季節で仕事の量が大きく変わる会社もあります。
原則の枠だけで管理を続けると、忙しい日は残業が増え、余裕のある日は時間を持て余す状態になりがちです。
制度と実態のずれが、残業代の負担につながる
制度と実態が合っていないと、仕事の少ない日にも所定の時間を使い、忙しい日の残業だけが積み上がります。反対に、支払うべき割増賃金がもれている場合もあります。
時間外労働には上限規制があり、原則は月45時間、年360時間です。採用の場面でも、働き方の柔軟さは応募者が会社を選ぶ理由のひとつになっています。
労働時間制度の選び方は、人件費だけでなく、採用と定着にも関わる経営の課題といえます。
労働時間制度の種類と、選ぶときの落とし穴
おもな制度の種類と特徴
制度は、大きく3つのグループに分けられます。労働時間を期間でならす制度、働く時刻を本人にゆだねる制度、一定の時間働いたとみなす制度です。
| 制度 | 向いている会社・仕事 | おもな手続き |
|---|---|---|
| 1か月単位の変形労働時間制 | 月の中で忙しさに波がある | 就業規則、または労使協定と届出 |
| 1年単位の変形労働時間制 | 季節で忙しさが変わる | 労使協定と届出 |
| 1週間単位の非定型的変形労働時間制 | 30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店 | 労使協定と届出 |
| フレックスタイム制 | 始業と終業の時刻を本人が決められる | 就業規則と労使協定 |
| 事業場外みなし労働時間制 | 社外で働き、労働時間の算定がむずかしい | 就業規則への定め。必要に応じて労使協定 |
| 専門業務型裁量労働制 | 法令で定める20の業務 | 労使協定と届出、本人の同意 |
| 企画業務型裁量労働制 | 事業運営の企画、立案、調査、分析 | 労使委員会の決議と届出、本人の同意 |
このほか、高度の専門知識をもつ一部の人を対象にした高度プロフェッショナル制度もあります。年収などの要件が定められており、労使委員会の決議と本人の同意が必要です。
各制度の概要について、詳しくは厚生労働省の「労働時間・休日」をご確認ください。
制度選びでよくある落とし穴
制度を入れただけで、残業代が減るわけではありません。よくある落とし穴は次のとおりです。
- 変形労働時間制で、勤務表を期間の途中で会社の都合により変えている
- フレックスタイム制なのに、上司が出社時刻を細かく指示している
- 裁量労働制の対象でない業務の人まで、制度の対象にしている
- みなし時間と実際に働いた時間が、大きくかけ離れている
- 就業規則や労使協定の内容と、勤怠システムの設定が合っていない
よくある状況をもとにしたモデルケースをご紹介します。従業員40人ほどの会社が、残業代をおさえる目的で1か月単位の変形労働時間制を入れました。
しかし、勤務表を期間が始まる前に決めきれず、週の途中で何度も組み替えていました。この運用では制度の要件を満たさないと判断され、原則どおりの割増賃金が必要になるおそれがあります。
変形労働時間制の運用について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。

自社に合う労働時間制度を選ぶための実務のポイント
業務の特徴から候補をしぼる
制度は「残業代を減らせるか」ではなく、「仕事の進め方に合うか」で選ぶのが基本です。次の目安で候補をしぼってみてください。
- 忙しい時期があらかじめ分かる:変形労働時間制
- 働く時刻を本人にゆだねても仕事が回る:フレックスタイム制
- 仕事の進め方と時間配分を本人にゆだねている:裁量労働制
- どれにも当てはまらない:原則の時間管理のまま、業務の見直しを優先
部署ごとに別の制度を使うこともできます。たとえば、開発部門はフレックスタイム制、店舗は変形労働時間制という組み合わせです。
裁量労働制は対象業務が限られ、2024年4月からは専門業務型でも本人の同意が必要になりました。詳しくは厚生労働省の「裁量労働制の概要」をご確認ください。
導入の手間と運用の負担を比べる
制度によって、導入時の手間と導入後の負担は異なります。変形労働時間制は、勤務表をあらかじめ決めて周知する作業が、期間ごとに発生します。
フレックスタイム制は、清算期間ごとに総労働時間を集計します。清算期間は最長3か月ですが、1か月を超えると労使協定の届出が必要になり、計算も複雑になります。
裁量労働制は、健康を守るための措置や、同意に関する記録の保存が求められます。導入できるかどうかだけでなく、運用を続けられるかを比べることが大切です。
費用を考えるときは、減らせる残業代だけを見ないようにしてください。規程の整備、勤怠システムの設定変更、管理職への説明にかかる時間も、あわせて見積もります。
自社で対応できる範囲と、専門家に相談したほうがよい場面の目安は次のとおりです。
- 自社で対応できる範囲:部署ごとの繁閑の整理、残業時間の実績の集計、現場へのヒアリング
- 相談したほうがよい場面:複数の制度を組み合わせる、裁量労働制の対象業務か判断に迷う、制度の変更で賃金が下がる人が出る
労働時間制度の設計と運用の見直しに関する支援内容は、サービスページでもご確認いただけます。
専門家である社労士の視点
労働時間制度の選び方で見落とされやすいのは、制度、就業規則、労使協定、勤怠管理の4つをそろえることです。どれかひとつでも食い違うと、制度が有効と認められないおそれがあります。
ご相談で多いのは、「制度は入れたが、運用が続かなかった」というお悩みです。現場の管理職が制度のルールを理解していないと、従来どおりの指示が残ってしまいます。
また、制度を変えると、残業代が減って手取りが下がる人が出る場合があります。労働条件の不利益な変更にあたるかどうかは、会社の状況によって結論が変わります。個別の判断は、専門家へご相談ください。
管理職への説明と、従業員への丁寧な周知まで含めて、導入の計画を立てることをおすすめします。就業規則の見直しについて、詳しくはこちらの記事もご参照ください。

よくある質問(FAQ)
Q1. 小さな会社でも、変形労働時間制やフレックスタイム制を使えますか
使えます。会社の規模による制限は、原則としてありません。ただし、1週間単位の非定型的変形労働時間制だけは、30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店に限られます。従業員が10人未満の会社でも、1か月単位の変形労働時間制は、就業規則に準ずる書面で定めて周知すれば導入できます。労使協定の締結や届出が必要な制度もあるため、手続きは事前に確認してください。
Q2. 裁量労働制にすれば、残業代は不要になりますか
不要になるとは限りません。裁量労働制は、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度です。みなし時間が法定労働時間を超える場合は、超えた分の割増賃金が必要です。深夜や法定休日に働いた場合の割増賃金も、別に支払います。対象業務にあたらない人に適用していた場合は、制度が認められないおそれもあります。
Q3. 制度を変えるとき、どのくらいの準備期間を見ておけばよいですか
会社の状況によりますが、数か月の余裕をもって進めることをおすすめします。残業時間の分析、制度の設計、就業規則の変更、労使協定の締結と、順に進める作業が多いためです。従業員への説明と、勤怠システムの設定変更も必要です。届出が必要な制度は、制度を始める前に手続きを済ませます。事業年度や繁忙期に合わせて、逆算して計画を立ててください。
まとめ:労働時間制度は仕事の進め方に合わせて選ぶ
労働時間制度は、変形労働時間制、フレックスタイム制、みなし労働時間制など、種類ごとに向いている仕事が異なります。残業代をおさえる目的だけで選ぶと、運用が続かず、かえって負担が増えるおそれがあります。
まずは部署ごとの忙しさの波と、仕事の進め方を整理してみてください。そのうえで、導入の手間と運用の負担を比べ、続けられる制度を選ぶことが大切です。
社会保険労務士法人秋田国際人事総研では、労働時間制度の選定から規程の整備、導入後の運用までを支援しています。支援内容は労働時間コンサルティングのページでご確認ください。無料相談では、自社に合う方法を具体的にご相談いただけます。
【免責事項】
本記事は、2026年10月時点の法令および公的機関の公表情報にもとづき、一般的な情報の提供を目的として作成しています。
法改正や通達の変更などにより、内容が最新の取扱いと異なる場合があります。
個別の事案への当てはめは、会社の状況によって結論が変わります。実際の対応にあたっては、専門家へご相談ください。
本記事の情報を利用した結果について、当法人は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
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