フレックスタイム制 みなし労働時間制の違いとは?IT企業が陥る労務の落とし穴
2026.06.16
毎日の勤怠管理やスタッフの働き方について、頭を悩ませていませんか!?
「うちは自由な働き方だから、残業代は払わなくていいよね」というお話を聞くことがありますが、お気持ち、よく分かります。日々いそがしい経営者様にとっては、少しでも手続きをシンプルにしたいですよね。
しかし、それは大きな誤解かもしれません。実は、フレックスタイム制とみなし労働時間制は、異なる仕組みの制度です。この2つの制度を混同したままでいると、のちのち未払い残業代の請求など、大きな労務トラブルにつながる危険があります。
今回は、IT企業や急成長するスタートアップの経営者様や人事担当者様に向けて、2つの制度の違いと正しい実務対応を分かりやすく解説します。
なぜ今フレックスタイム制 みなし労働時間制の正しい理解が重要なのか?
会社の成長を支えるためには、スタッフが力を発揮できる環境づくりが欠かせません。そのなかで、労働時間の管理はとても大切な土台となります。
働き方の多様化とIT業界での導入背景
IT業界やスタートアップでは、パソコンがあればいつでもどこでも仕事ができる環境が整っています。エンジニアやデザイナーなど、個人の集中できる時間帯に合わせて働いてもらう方が、生産性が上がることも多いものです。
そのため、時間を有効に使える制度として、多くの会社が新しい働き方を取り入れています。しかし、制度の名前やイメージだけで導入してしまうと、法律のルールから外れてしまうことがあります。
正しい知識をもたないまま運用を続けることは、会社にとって大きなリスクになります。
労働基準法の取り締まり強化と企業の社会的責任
近年、労働基準法を守ることへの社会的な関心は、ますます高まっています。労基署など行政も、労働時間の適切な管理について、厳しい目を光らせています。
万が一、未払い残業代があることが発覚した場合、さかのぼって大きな金額を支払わなければならないこともあります。それだけでなく、会社の信用が落ちてしまい、新しい人材の採用が難しくなるという痛手も負いかねません。
優秀なスタッフに長く働いてもらうためにも、今ここで正しい知識を身につけることが求められています。

混同することで起きる具体的な課題と2つの落とし穴
多くの会社で起きてしまいがちな、具体的なトラブルの例を見ていきましょう。よくある落とし穴は、大きく分けて2つあります。
残業代の計算間違いによる未払いリスク
もっとも多い誤解が、「フレックスタイム制だから残業代はない」と思い込んでしまうことです。フレックスタイム制であっても、あらかじめ決めた総労働時間を超えて働いた場合は、当然ですが残業代が発生します。
一方、みなし労働時間制(あらかじめ決めた時間分を働いたとみなす仕組み)では、実際の労働時間に関わらず、決まった時間分の給与を支払います。この2つをごちゃ混ぜにしてしまうと、本来払うべき残業代を払っていない状態になってしまいます。
スタッフからの指摘や、労働基準監督署の調査によって、大きな問題になるケースが後を絶ちません。
名ばかりフレックスや不適切なみなし運用の実態
名前だけは「フレックス」や「みなし」にしておきながら、実態が伴っていないケースもよく見られます。たとえば、フレックスタイム制なのに、遅刻や早退のペナルティ(コアタイムを除く)を科しているような場合です。
これでは、自分で時間を決められるという制度の目的を果たしていません。また、みなし労働時間制なのに、上司が細かく時間を指定して業務を命令している場合も問題です。
実態が法律のルールに合っていないと、万が一のときに制度そのものが無効と判断されてしまいます。

制度の違いを正しく理解するための解決策と実務のポイント
では、2つの制度にはどのような違いがあるのでしょうか。まずはその全体像を、分かりやすい表で整理してみましょう。
| 項目 | フレックスタイム制 | みなし労働時間制(裁量労働制など) |
|---|---|---|
| 時間の決定権 | 働く人が始業と終業の時間を決める | 働く人が時間の配分や進め方を決める |
| 労働時間の計算 | 実際の労働時間をタイムカードなどで計る | 実際の時間に関わらず労使協定で定めた時間とみなす |
| 残業代の発生 | 清算期間の枠を超えたら発生 | みなした時間が法定労働時間を超えれば発生 |
| 深夜・休日手当 | 法律どおりに支払う必要がある | 法律どおりに支払う必要がある |
それぞれの制度の特徴と大きな違い
フレックスタイム制は、あらかじめ決められた1か月などの期間のなかで、働く本人がその日の「始める時間」と「終える時間」を自由に決められる制度です。
ポイント: フレックスタイム制では、コアタイム(必ず働かなければならない時間帯)や、フレキシブルタイム(働く時間を自由に選べる時間帯)を設定することが一般的です。
これに対して、みなし労働時間制は、実際の労働時間が何時間であっても、「今日は8時間働いたものとする」というように、あらかじめ労使の間で決めた時間分を働いたとみなす制度です。特定の専門的な職務に就くスタッフに適用されます。
どちらの制度も、深夜(夜22時間から朝5時まで)に働いた場合や、法定休日(法律で定められた絶対に必要な休みの日)に働いた場合の割増賃金は、必ず支払わなければなりません。
適切な就業規則の作成と労使協定の締結
これらの制度を正しく導入するためには、会社のルールブックである就業規則にしっかりと記載する必要があります。さらに、会社と労働者の代表が書面で約束を交わす、労使協定の締結が必要です。
みなし労働時間制の一種である専門業務型裁量労働制などを導入する場合は、労働基準監督署への届け出も義務づけられています。詳しい手続きや最新の法改正情報については、厚生労働省のホームページなども参考になります。
また、会社の状況に合わせた個別のルール作りについては、トラブルを未然に防ぐためにも、事前に専門家へご相談をすることをおすすめします。
詳しくはこちらの記事もご参照ください。会社の基本となるルール作りについて解説しています。
特定業種の労務管理に強い社労士の視点
IT企業やスタートアップの経営において、労務管理は、単なる事務手続きではありません。それは、優秀なエンジニアなどの人材を惹きつけ、会社を大きく成長させるための、大切な経営戦略のひとつです。
フレックスタイム制もみなし労働時間制も、正しく使えばスタッフの満足度を高め、会社の業績を伸ばす素晴らしい武器になります。しかし、一歩間違えると、大きな法的リスクを抱え込むことになってしまいます。
私たちは、形だけの書類を作るのではなく、貴社のビジネスモデルやスタッフの働き方の実態をじっくりとお聞きします。そのうえで、法律をしっかりと守りながら、みんながのびのびと働ける最適な仕組みをご提案します。
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フレックスタイム制及びみなし労働時間制に関するよくある質問
実務の現場で、よく経営者様や人事の方からいただく質問を3つ集めました。
Q1:フレックスタイム制でも残業代を支払う必要がありますか?
はい、支払う必要があります。
フレックスタイム制は、働く時間を自由に選べる制度ですが、時間を計らなくてよい制度ではありません。あらかじめ決めた清算期間のなかで、法律で定められた上限の時間、または会社で定めた時間を超えて働いた分については、しっかりと残業代を計算して支払う義務があります。毎日の出退勤の記録は、タイムカードなどで正確に残しておくことが大切です。
Q2:みなし労働時間制(裁量労働制)なら出退勤の時間は完全に自由ですか?
基本的には本人の自由ですが、会社のルールに従う必要があります。
みなし労働時間制、特に裁量労働制では、仕事の進め方や時間の配分をスタッフ本人の裁量に委ねることが法律の条件となっています。そのため、会社が「毎朝9時に必ず席につくこと」といった強い命令をすることはできません。ただし、業務の連絡や会議のために特定の時間を指定することや、深夜労働を防ぐために一定の枠を設けることは、労務管理の上で認められます。
Q3:2つの制度を組み合わせて導入することはできるのでしょうか?
いいえ、同じスタッフに対して同時に2つの制度を適用することはできません。
フレックスタイム制は「実際に働いた時間を集計する仕組み」であり、みなし労働時間制は「実際の時間に関わらず決まった時間働いたとみなす仕組み」です。これらは時間の計算方法の根本が異なるため、ひとりのスタッフに対して同時に使うことはできません。ただし、会社の中で「開発部門のスタッフには裁量労働制を適用し、総務部門のスタッフにはフレックスタイム制を適用する」というように、職種ごとに分けて導入することは可能です。
詳しくはこちらの記事もご参照ください。職種ごとの適切な制度設計について紹介しています。
まとめ
今回は、フレックスタイム制 みなし労働時間制の違いと、IT企業やスタートアップが気をつけるべき労務の落とし穴について解説しました。
それぞれの制度の目的や、残業代の仕組みは大きく異なります。自社のスタッフの働き方にどちらが合っているのかを正しく見極め、就業規則や労使協定などの手続きを丁寧に進めることが大切です。
正しい労務管理をおこなうことは、スタッフとの信頼関係を深め、会社の健やかな成長を支える強い足腰となります。制度の導入や見直しについて、少しでも不安なことがあれば、どうぞお気軽に専門家へご相談をしてください。
フレックスタイム制やみなし労働時間制の適切な設計や、IT・スタートアップ特有の労務管理について詳しくは、当法人の人事労務顧問サービスをご覧ください。まずは無料相談で貴社の状況をお聞かせください。特定業種への深い専門性をもち、東京都中心の手厚いサポートで、貴社の成長を全力でバックアップいたします。
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