「固定残業代」で毎月数十万円の未払い残業代が発生しているIT企業の特徴
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2026.06.24
「毎月の残業代を定額にしているから、うちは大丈夫」と思っていませんか?実は、固定残業代の未払いは、会社の経営を揺るがす大きな問題になります。
特にITやスタートアップでは、知らないうちに未払いが発生しがちです。今回は、実務で気をつけるべきポイントを分かりやすくお伝えします。
なぜ今、固定残業代の未払いが大きな問題になるのか
「固定残業代」を導入する会社は増えています。しかし、正しく運用できていない会社も見かけます。法律のルールが厳しくなった今、少しのミスが大きなトラブルにつながります。なぜ今、この問題に注目が集まっているのか、その理由を2つの視点から見ていきましょう。
法律のルールが変わって未払いのリスクが高まったため
結論からお伝えすると、法改正によって会社が受けるダメージが大きくなったためです。理由は、未払い残業代を請求できる期間(賃金の請求期間)が延びたことにあります。
以前は2年でしたが、今は過去3年分までさかのぼって請求されるようになりました。
たとえば、1人あたり月5万円の未払いがあると、3年で180万円になります。
これが10人の従業員から一度に請求されたら、1,800万円という大きなお金が必要です。そのため、固定残業代の未払いを放置することは、会社にとって非常に危険な状態といえます。
(注意)
労働基準法115条は、賃金の請求権について「5年間」と定めています。
一方で、同法附則143条3項が115条の適用を読み替え、「賃金(退職手当を除く。)の請求権は3年間」とする経過措置を置いています。

従業員が会社の労務管理(働く時間の管理)を厳しく見るようになったため
従業員のみなさまが、働く時間や給与の仕組みに対して、高い関心を持つようになったことも理由の1つです。
今は、インターネットやSNSで、かんたんに法律の知識が手に入ります。「自分の会社の固定残業代の計算はおかしいのではないか」と気づく従業員が増えているのです。
特にIT業界やスタートアップでは、パソコンのログなどから働く時間がはっきりと分かります。証拠が残りやすいため、トラブルになったときに会社が言い逃れをすることはできません。従業員との信頼関係をまもるためにも、正しい労務管理が求められています。
固定残業代の未払いが発生しやすい会社に共通する具体的な課題と落とし穴
固定残業代の未払いが発生している会社には、いくつかの共通した特徴があります。悪気はなくても、間違った思い込みから法律違反になっているケースがほとんどです。ここでは、特にIT企業や宿泊業などでよく見られる、2つの大きな落とし穴について詳しく解説します。
労働時間(働く時間)を正しく記録していないケース
1つ目の落とし穴は、従業員の働く時間を正確に把握していないことです。固定残業代を払っているからといって、時間を測らなくてよいわけではありません。
実際の残業時間が、あらかじめ設定した時間を超えたときは、その差額を支払う義務があります。しかし、タイムカードを押すルールが曖昧な会社はとても多いです。
「固定の時間を超えていないはずだ」という思い込みが、一番危険だといえます。まずは、働く時間を1分単位で正しく記録することから始めなければなりません。
基本給のなかに残業代をあいまいに含めているケース
2つ目の落とし穴は、給与の手当の分け方が不適切であることです。基本給のなかに、何時間分の残業代が含まれているのか、明確に分かれていないケースが目立ちます。
就業規則や雇用契約書に、正しい記載がないと法律上、固定残業代として認められません。認められない場合、手当も含めたすべての金額を算定基礎金額として、そこからさらに残業代を計算し直すことになります。
そうなると、会社が想定していた金額の何倍もの未払いが発生してしまうのです。契約書や明細書の書き方に不備がないか、今すぐ確認する必要があります。

固定残業代の未払いを防ぐための具体的な解決策と実務対応のポイント
では、固定残業代の未払いによるトラブルを防ぐためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。今日から取り組める実務のポイントを、2つのステップに分けて分かりやすくご紹介します。
正しい仕組みを作ることで、経営者のみなさまと従業員の双方が、安心して働ける環境を整えることができます。
毎月の残業時間が固定の時間を超えていないか必ずチェックすること
最初の対策は、実際の残業時間と固定残業代の時間を、毎月比べることです。もし、実際の残業時間が設定された時間を超えていた場合は、その月の給与で必ず差額を支給してください。
これを「清算」と呼びます。清算を毎月おこなっていれば、固定残業代の未払いで大きなトラブルになることはありません。
以下の表は、正しい清算がおこなわれているかどうかのチェックリストです。
自社の状況と照らし合わせてみてください。
| チェック項目 | 実施できているか | 注意すべきポイント |
| 1分単位で働く時間を記録している | はい / いいえ | 自己申告ではなく客観的な記録が必要 |
| 設定時間を超えた分の差額を払っている | はい / いいえ | 「今月は忙しかったから」で済ませない |
| 深夜残業(夜22時以降の労働)の手当を計算している | はい / いいえ | 固定残業代とは別に手当が必要な場合がある |
このように、毎月の管理を徹底することが、会社をまもる第一歩になります。
就業規則(会社のルールをまとめた書類)の記載を正しく見直すこと
次の対策は、会社のルールである就業規則や契約書を、固定残業代について明確にすることです。固定残業代を支給するとき、弊社では最低以下の3つのことを明記することを推奨しています。
- 固定残業代の金額がいくらであるか
- その金額が何時間分の残業代に当たるのか
- 設定された時間を超えたときは、差額を必ず支払うという約束
これらが1つでも抜けていると、紛争化したときに会社が窮地に追い込まれる可能性が高くなります。
厚生労働省のホームページなどでも、正しい記載例が公開されています。
公的な情報を参考にしながら、自社のルールが最新の法律に合っているか、確認を進めましょう。
専門家である社労士の視点
固定残業代の未払いは、会社のキャッシュフローを一気に悪化させる爆弾のようなものです。
特にIT業界やスタートアップでは、裁量労働制やフレックスタイム制(働く時間を自分で決められる制度)と組み合わせて使い、混乱しているケースをよく見かけます。
「うちは固定残業代だから、未払いは発生しない」と思い込むことが、もっとも危険です。未払いを防ぐためには、自社の業種や働き方に合った、独自の給与体系を設計しなければなりません。
まずは現状の働く時間と、給与の支払い方にズレがないかを、客観的に調べることが大切です。法律の解釈や実務のやり方で迷ったときは、個別具体的な判断を自分だけでせず、専門家へご相談をすることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)
固定残業代に関して、経営者や人事のみなさまからよくいただく質問にお答えします。
Q1:固定残業代(定額の残業代)を払っていれば、どれだけ残業させても追加の支払いは不要ですか?
追加の支払いは必要です。固定残業代は、あくまで「あらかじめ決めた時間分」の前払いに過ぎません。実際の残業時間が、その設定された時間を1分でも超えた場合は、超えた分の残業代を計算して、追加で支払わなければなりません。
これをおこなわずに一律の金額だけを支払い続けていると、固定残業代の未払いとして法律違反になります。毎月の労働時間を正しく集計し、差額の有無を確認することが義務づけられています。
Q2:求人票に固定残業代のことをどう書けば、未払いのトラブルを防げますか?
基本給と固定残業代の金額、そしてその金額が何時間分の労働に対するものなのかを、明確に分けて記載してください。求職者に対して、あらかじめ分かりやすい形で条件を提示することが、トラブル防止の鍵となります。曖昧な書き方をしていると、採用された後に「聞いていた話と違う」と不信感を持たれる原因になります。
ハローワークの基準などでも、明確な区分での記載が強く求められていますので、求人票を出す前にしっかりと内容を整理しましょう。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000184068.pdf
Q3:過去にさかのぼって未払い残業代を請求されたら、どう対応すべきですか?
まずは焦らずに、従業員の実際の労働記録と、過去の給与明細をすべて確認してください。請求された金額が本当に正しいかどうかを、法律のルールに沿って再計算する必要があります。
もし会社側に計算違いや制度の不備が見つかった場合は、誠実に対応しなければなりません。ただし、お互いの主張が食い違うことも多いため、自社だけで解決しようとせず、速やかに専門家へご相談をすることをおすすめします。
(まとめ)固定残業代の未払いを防いで健全な会社経営を
固定残業代は、正しく使えば便利な制度です。しかし、運用の仕方を間違えると、固定残業代の未払いという大きなリスクを背負うことになります。
特にITやスタートアップなどの成長企業では、気がつかないうちに未払い額が数十万円、数百万円と膨らんでしまうケースが少なくありません。
大切な従業員を失わないためにも、そして会社をまもるためにも、今すぐ自社の労務管理を見直してみましょう。
固定残業代の未払いや、給与計算の仕組みについて少しでも不安があるときは、お一人で悩む必要はありません。私たちの提供する一般労務のサポートでは、東京都中心のIT企業やスタートアップのみなさまを、深い専門性をもって支援しております。
まずは貴社の状況をお聞かせください。
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